磯村尚徳氏からのメッセージ

Hisanori ISOMURAブルゴーニュ・ワインは王様

ブルゴーニュ・ワインの愛好家にとって、“ブルゴーニュのクリマ” がユネスコ世界文化遺産に登録された事は、言うまでもなく大変喜ばしいニュースです。ブルゴーニュ・シュヴァリエ・デュ・タストヴァン(利き酒騎士団)の日本部会長として、この国際的な登録の為に惜しみなく尽力された方々へ、心からお祝いを申し上げます。

私は、日本政府の依頼で、13年間ユネスコの特別顧問を務めました関係で、ユネスコの事務的な諸手続きがいかに煩雑で時間のかかるものであるかを、誰よりもよく存じております。

例えば、世界的な名誉を勝ち得たのは「クリマ」であり、必ずしもブルゴーニュ・ワインではないと、皮肉な見方をする向きもあるでしょう。もともと、ユネスコの決定というものは、かなり玉虫色なのです。

しかし、いずれにせよ、ブルゴーニュ・ワインが素晴らしいものだということは、誰も否定できるはずがございません!!

日本は現在、ボージョレ・ヌーボーの世界一の輸入国ですが、2014年にはついに、ブルゴーニュ・ワインの輸入においても世界第三位(輸入量ではなく金額で)となりました。

アジア・太平洋地域では、かつての大英帝国の影響のおかげで、フランスの赤ワインといえば、ボルドー・ワインと同一視されてきました。単純すぎるとのご批判を覚悟で申し上げれば、隣人である中国の方々はおしなべてボルドー・ワインを好み、特にシャトー・ラフィット・ロートシルトが好きです。しかし日本では、ブルゴーニュ・ワインを愛好する人がとみに増えており、グラン・クリュなどの最高級格付けのワインだけに限らず、良質のブルゴーニュ・ワインが好まれています。

さらに、日本におけるワイン愛好家のサークルなどでは、ブルゴーニュの赤ワインを王様に、ボルドーの赤ワインを女王様になぞらえることも多いようです。どちらがよいかという昔からのフランス人の間の論争に干渉するつもりはありませんが、、私ども日本人といたしましては、これからも、ますますブルゴーニュ・ワインを堪能したいと思う次第です。フェニックス・ワイン・クラブの会員の方々が、私たちのこの夢を実現するための力になってくださることを期待いたします。

磯村尚徳(いそむらひさのり)氏 略歴

NHK入局後、海外特派員を経て、ワシントン支局長、報道局長、専務理事待遇特別主幹などを勤める。特に1974年からは、“ニュースセンター9時”の編集長兼キャスターを務め、現在の報道番組の原型を作り、ニュースを人気番組にし、“ミスターNHK”と呼ばれ、一世を風靡した1995年パリ日本文化会館初代館長に就任。(〜2005年)日本とヨーロッパの架け橋として活躍した功績に、“レジオン・ドヌール勲章オフィシエ賞”・“芸術文芸勲章コマンドゥール賞”を受賞。その他にも、日本記者クラブ賞など数々の賞を受賞。ブルゴーニュ・シュヴァリエ・デュ・タストヴァン(利き酒騎士団)の日本部会長を務める。